局所自由層の射



補題

$X$をハウスドルフ実多様体,$E$, $F$をベクトル束とし,$\varphi\in\operatorname{Hom}_{\Gamma(X,\mathcal{O}_X)}(\Gamma(X,E),\Gamma(X,F))$とする.$x\in X$を一つ取って固定する.
このとき$s\in\Gamma(X,E)$が$s(x)=0$を満たすなら,$\varphi(s)(x)=0$である.

証明

まず$s$が$x$の近傍で$0$となる場合は,次より$\varphi(s)(x)=0$である.
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実際$s$が$x$の開近傍$U$上で$0$を取ると仮定すると,上のリンク先の定理より$\lambda\in\Gamma(X,\mathcal{O}_X)$で$\lambda(x)=1$かつ$U$の外で$0$となるものが取れて
\begin{align}
0=\varphi(\lambda s)(x)=\varphi(s)(x)
\end{align}
となるからである.次に$s(x)=0$であって近傍で$0$とは限らないときを考える.$x$まわりの$E$の自明化近傍かつ$X$のチャートであるような$U$を取り,$x$の相対コンパクト(閉包がコンパクト)な開近傍$V$で$K:=\overline{V}\subset U$となるものを取る.再び上のリンク先の定理より,$\lambda\in\Gamma(X,\mathcal{O}_X)$で$\lambda\vert_K\equiv 1$かつ$\operatorname{supp}(\lambda)\subset U$となるものが取れる.$E\vert_U$のフレーム$v_1,\ldots,v_r$を取り,$s\vert_U=\sum_if_iv_i$と書く.$f_i$, $v_i$のそれぞれに$\lambda$を掛けて$X$上に延長したものを同じ記号であらわすと,2つの大域切断$s$, $\sum_if_iv_i$は$K$上では一致している.今$s(x)=0$であり$v_1(x),\ldots,v_r(x)$は線形独立であるから,$f_1(x)=\cdots=f_r(x)=0$である.よって
\begin{align}
\varphi(s)(x)=\sum_if_i(x)\varphi(v_i)(x)=0
\end{align}
となる.$\square$

命題

$X$をハウスドルフ実多様体,$\mathcal{M}$,$\mathcal{N}$を$X$上有限階数局所自由層とする.次の自然同型がある:

$$\operatorname{Hom}_{\mathcal{O}_X}(\mathcal{M},\mathcal{N})\cong\operatorname{Hom}_{\Gamma(X,\mathcal{O}_X)}(\Gamma(X,\mathcal{M}),\Gamma(X,\mathcal{N}))$$

証明

$E$, $F$をベクトル束とし,$\mathcal{M}=\mathcal{O}_X(E)$, $\mathcal{N}=\mathcal{O}_X(F)$とする.
$\varphi\in\operatorname{Hom}_{\Gamma(X,\mathcal{O}_X)}(\Gamma(X,E),\Gamma(X,F))$に対して$\overline{\varphi}\in\operatorname{Hom}(E,F)$を

\begin{CD}
\Gamma(X,E) @>{\varphi}>> \Gamma(X,F)\\
@VVV @VVV\\
E_x @>{\overline{\varphi}_x}>> F_x
\end{CD}

を可換にする$\overline{\varphi}_x$を束ねて作る.$\overline{\varphi}_x$のwell-definednessは上の補題より従う.
こうして作った$\overline{\varphi}$が滑らかであることを示すために,任意の$x\in X$に対して$x$の周りで定義された滑らかなセクション$s\in\Gamma(U,E)$と$\overline{\varphi}$の合成が$U$より狭い$x$の開近傍で滑らかなセクションになることを示す.$s$の定義域$U$は小さく取り直して,$x$まわりの$E$の自明化近傍かつ$X$のチャートであるとしてよい.このとき上の補題の証明より$s$に依存しない$V$があって$s\vert_V$は$X$上に延長できる.よって$V$上では$\overline{\varphi}\circ s=\varphi(s)$となっていてこれは滑らかである.よって$\overline{\varphi}$は滑らかである.$\varphi\mapsto\overline{\varphi}$が全単射であることは省略.自然性の証明も省略.$\square$