調号の規則



音楽において "C major, G major, D major, ..." と音階が5度ずつ上がっていくとき,調号は "#0, #1, #2, ..." と変化し,
一方で "C major, F major, Bb major, ..." と音階が5度ずつ下がっていくとき,調号は "b0, b1, b2, ..." と変化する.
このことを説明する.

定義

写像$s\colon\mathbb{Z}/7\mathbb{Z}\rightarrow\mathbb{Z}/12\mathbb{Z}$全体の集合を$S$で表す.$S$には$\mathbb{Z}/12\mathbb{Z}$の群演算を用いて群構造が入る.

元$s\in S$を,$s(0)$から$s(6)$までを順に書き並べて
$$s=(s(0),\ldots,s(6))$$
と書き表すことにする.この記法の下,特別な元$C\in S$を
$$C=(0,2,4,5,7,9,11)$$
で定義する.

ここで$\mathbb{Z}/12\mathbb{Z}$とは半音階のことであり,$C$の定義はC majorがC, D, E, F, G, A, Bからなることを表している.

定義

  • $n\in\mathbb{Z}/12\mathbb{Z}$に対して,同じ記号の$n\in S$を$$n=(n,n,n,n,n,n,n)$$のこととする.
  • $m\in\mathbb{Z}/7\mathbb{Z}$, $s\in S$に対して$m^*s\in S$を$$(m^*s)(x)=s(x+m)$$にて定義する.

$m,l\in\mathbb{Z}/7\mathbb{Z}$, $s,t \in S$に対して,
\begin{align}
&(m+l)^*s=m^*l^*s\\
&m^*(s+t)=m^*s+m^*t
\end{align}
が成り立っている.($\mathbb{Z}/7\mathbb{Z}$が$S$に成分の左平行移動で作用している)

この記法によれば,
\begin{align}
\begin{array}{ll}
4^*C=(7,9,11,0,2,4,5) & (\text{G mixolydian})\\
C+7=(7,9,11,0,2,4,6) & (\text{G major})
\end{array}
\end{align}
と書ける.辺々引いて得られる$C+7-4^*C=(0,0,0,0,0,0,1)$という式は,G majorではGから見て第7音であるFに#が付いているという意味である.
この両辺を4つ右に平行移動すると
$$(-4)^*(C+7-4^*C)=(0,0,0,1,0,0,0)$$
を得る.これはCから見て第4音にあるFに#が付いていることを表す.
G majorの調号がこのようにして得られた.これを一般化したのが次の命題である.

命題

証明

同様にフラット系の音階についても考えよう.2つの音階
\begin{align}
\begin{array}{ll}
(-4)^*C=(5,7,9,11,0,2,4) & (\text{F lydian})\\
C-7=(5,7,9,10,0,2,4) & (\text{F major})
\end{array}
\end{align}
の差$C-7-(-4)^*C=(0,0,0,-1,0,0,0)$は,F majorではFから見て第4音であるBにbが付いているという意味である.
この両辺を4つ左に平行移動すると
$$4^*(C-7-(-4)^*C)=(0,0,0,0,0,0,-1)$$
を得る.これはCから見て第7音にあるBにbが付いていることを表す.
F majorの調号が得られたので,一般化した次の命題を得る.

命題

証明